トップレスを拝見いたします

モナコをぬけるとすぐにニースというフランスの町へ着いた。地中海沿岸、しかも真夏、暑い。がしかしガソリン代を無駄に消費することはできないので、窓を全開で海岸沿いをひた走る。モナコに比べると随分若者率が高いようだ。

ビーチ。若者。ビキニ。

これらから導き出される答えは、分かりますか。言わずもがなですねそう、トップレス。

欧州の女人は公衆の面前であろうが恥らうことなくぺろりとその上半身をさらけ出す習性があるらしい。真偽のほどを確かめるべく少し車を停め、ビーチへ繰り出す。

います。そこには確かにトップをレスした女人どもが。

老若男女、あ男は通常トップレスだ、体の脂肪分の多少も関係なくさらけだす人々。メガネを持参するか、事前にブルーベリーを摂取しておくべきだった。視力が良くなる気がしたことだろう。

このあとドイツでもっと凄まじいものを目にするなんてこの時は知る由もなく、トップレス、ただそれだけに満足感を得ていた我々。

ひとしきり拝んだのち、さらに海岸沿いを走らせる。と、映画祭で有名なあの町、カンヌへ到着。カンヌってフランスにあったのか。しかも南部のこんな暑いところにあったのか。

少し町を散策。カフェやレストランが並ぶ通りなどが可愛らしい。そして無論、映画祭の会場も拝見。外から見たのみなので、特に何とも言えない。が、外に著名人の手形が浅草よろしく置かれてあったのでみていってみると、ミッキーマウスさんのものを発見。指はしっかり四本でいらっしゃいました。

小一時間町を歩き、再びクーガを走らせる。100キロほど。陽の暮れかかった頃、港町マルセイユへ到着。スーパーで適当に食物を入手し、海に沈む夕陽を眺めながら路上でそれを口にする。

その光景はさながら、いやまさしく浮浪者。通りがかるおフランスな人々に軽く蔑まれた目でみられる。それが気になったのかマオさん、「一応オレ達車もってんだよってアピールしよう。」とクーガのドアを開けそのすぐ側に立つことで車持ちをそれとなくアピール。

盗難車だって思われませんかね・・・

夕陽は雲にかすんであまり見えないは飯は不味いは蔑まれるはで、なんだか虚しいので、早々に出発し、丘の上に聳え立つ教会をみにいってみる。

もうすっかり夜の帳がおり、街の明かりがキラキラと、キラキラとなんだ・・・美しい。

情景描写がとことん苦手なことに本格的に気づいてきたがまあよしとしよう。

そうして港町をなめる程度観光し、次なる町を目指す。

世界一高い橋みよ

そろそろ恒例となりはじめたサービスエリアで車中泊、ののち翌朝早々にクーガを走らせる。

正しくは早起きのマオさんが、僕達が寝ている間に走らせてくれていたのだが、ともあれ、アルル( Arles )という町に到着。

ここにはかの有名なゴッホ!がかいた跳ね橋!があるらしい。唐突にエクスクラメーションマークを取り入れたみたがどうだろう。ゴッホや跳ね橋という言葉に躍動感がでただろう。

ほほう。なるほど。見事なまでに、跳ね橋だ。ここでゴッホは何を思ったか、跳ね橋の絵を描いたのか。イメージを膨らまそうと試みるも、やはり特に何も感じない。感受性の低さに自分のことながら辟易せざるを得ない。不感症?

ところがだ、今しがたウィキペディアを開いてみると、実に興味深い事実が判明した。

実際のモデルとなった橋はアルルの中心部から約3キロほど南西の運河に架かっていたものだが現存していない。再現されたものが観光地となっているが、運河の堤などの風景が異なるために、絵画の雰囲気が再現されているとまでは言えないものである。


にせものじゃん。何も感じない私が悪いわけではなかったのだ。安堵。

次はアヴィニヨン( Avignon )という町へ。アルルからそんなにかからずに到着。駐車場の構造の悪さに一同腹を立てつつもなんとか車を停め、歩く。待ち合わせ時間を決めて各自別行動。

観光スポットとなっている宮殿や、架かりきっていない、途中で切れているサン・ベネゼ橋をチラ見し、適当に通りを練り歩く。宮殿よりも、中途半端な橋よりも気になるのが、角のお店に並んでいる大量のソフトクリームマシン。

その数11台。色んな味が楽しめるのは素晴らしいが、それにしても多い。

アヴィニヨンにきてソフトクリームマシンに最も感銘を受けるなんて、やはりどこかおかしいのだろうかそうなのか。

そんな疑問を抱きつつクーガに乗り込み、後部座席で眠っていると、次なる町ミヨー( Millau )へ辿り着いていた。

何を隠そう、誰が隠そう、ここミヨーは世界で一番高い橋があることで有名な町なのだ。カーナビでは既にミヨーに入っているのだが、一向にそんな巨大な橋などみえてこない。

と、パノラマポイントを発見、皆一様に小高い丘に登り写真を撮影している。ということはその、彼らの視線の先には・・・高まる期待と興奮

みえちゃった

せ、世界一!!!なのですか?遠景なのでピンとこない。

ともかくもっとがぶり寄りしてみよう、さすれば何かかわるかも。と一気に橋の真下へいってみる。

せ、世界一!!!!なのかな?近景すぎてピンとこない。さらにまわりに比較対象がなくひたすら山なので余計にピンとこない。

というわけでもうこうなりゃ走ってしまおうではないか直接的に。もともとそのつもりではあったが。

一つ手前の場所から高速道路に乗り込み、ミヨー橋通行料7.7ユーロを支払う。今度こそ一同大興奮。何故かBGMは最近皆でハマってしまった戸川純。

爆音で戸川純をききながらミヨー橋を渡った人間はきっと史上初だろう。

高速道路なのでもちろん高速で走らなければならず、ゆっくりと橋を踏みしめることなく終了してしまう。さらに、絶景ポイントで車を停められるのにそこも通り過ぎてしまい、泣きのリベンジ。逆方向から今一度ミヨー橋へ。

今度のBGMはこれまたボクがふと流したら一同ハマってしまった相対性理論というバンドの曲。あくまで頭文字Dは流れない主義。

絶景ポイントに車を停め、橋を思う存分撮影する。世界一。エッフェル塔よりも高いそうだ。そういわれるとスゴい、気がする。

天候運が良いと橋に雲がかかり、まるで雲の上を走っているような錯覚を起こせるらしい。こういう時になぜ雨男ぶりが発揮されない。青空だったではないか。

晴れて世界一高い橋を渡り終えた我々は、そのまま高速道路を経て町を去る。

夜。

ガス欠の危機にさらされたりしつつも走り続けていると、突如、「わー!」と声を上げたくなるような町が現れた。この感じ、オーストリアのサルツブルグに到着した時のあれに近い。

すぐさま車を停め、歩いてみる。一体ここはどこなのだ。街並みが、橙色の街灯が、心地よくさせる。教会と、その中にマリア像がライトアップされ輝いている。残念ながら夜遅く中には入れなかったが、急な階段や石畳、全てが素敵な仕上がりなのだ。

だから一体ここはどこですか。

カーナビの指す場所の名前をみてみると、Le Puy-en-Velayとある。ル、ルプイエンヴァレ・・・?困ったときはウィキペディアだ。正しくは、ル・ピュイ=アン=ヴレだそうだ。れっきとした観光地だそうだ。

それでか、こんな辺鄙なところに我々以外に日本人がいたのは。

ともあれ、予期せぬ良い場所に出会えるとやたらに嬉しいものだ。夜は更ける。

理性と本能の間に間に・・・混浴温泉

サービスエリアで夜を明かし、今日はただただドイツへ向けて走る。このレンタカーの旅もそろそろ終わるのだ・・・。

そしてここではノブさんの要望で、「ひたすら適当に走って、気が向いたポイントで停まる」を敢行。観光地でもなんでもない、ただの、ありふれたようでありふれていない、普通の町をみたいのだそうだ。

というわけで運転はノブさんに任せ、僕とマオさんはひたすら眠りこける。11000曲を収めていたはずのジャミポッドもさすがに10日以上聞き続けていると飽きてくる。

そんな具合で若干沈黙多めのドライブを経て、夕方、ついに出発の地ドイツへと舞い戻ってきた。

だがここで終わりだなんて思っちゃあいけない。バーデンバーデン( Baden-Baden )という町で、この旅の一大イベント(だと個人的に思っている)混浴温泉へ!エクスクラメーション!

フリードリヒバッド( Friedrichsbad )というこの混浴風呂は、ロマンアイリッシュ風呂だそうです。久々の湯船、しかも混浴。私は今幸せです。

受付で入浴料の21ユーロを払う際、スタッフに「混浴で全裸ですがいいのね?」ときかれ勇ましくもちろんです、と答え脱衣所へ。

個室で、ドアが二つある脱衣スペースで忌々しい衣服を脱ぎ捨て、もう一つのドアを開けるとそこにロッカー。貴重品や衣服をつめこみ、お風呂セットを小脇に抱えいざ風呂場へ。

ずどーーーーん

いきなり混浴でございます。欧州人のあられもない姿が眼前に、立ちはだかる。が、皆リラクゼーションを求めてやってきているので、変な気分になったりは、しない。ごくごく普通にさえ思えてくる。大した代物ではないが自分も堂々とさらけだす。

何がどうロマンアイリッシュ風呂なのかというと、1から17まで番号の書かれたさまざまな種類の風呂やサウナがあり、それを順序よくこなしていくと、あら不思議終わる頃には体はきれいスッキリリフレッシュされているという仕組みなのだそうだ。

まずはシャワーで体を洗い汚れを落とし、低温サウナ室へ。暑すぎないので眠りこけている人もいる。その後中温サウナで再び汗を流す。背後に、巨大なマキグソのような物体がそびえたっていた。行った人なら分かるだろう・・・気になる人は、行ってみてください。

それからまたシャワーを浴び(面倒なので浴びなかった)、29ユーロ払った人は石鹸マッサージを受け、(もったいないので払わなかった)、二種類の温泉スチームサウナへ。独特のにおい。

その先にぬるめの温泉。書きそびれていたはこの施設はかなり貴族的というか、優雅な造りなので、あたかも自分が中世の貴族で、くるくるパーマの不気味なカツラをかぶっているような錯覚に陥ることが容易くできる。

プールサイドならぬ温泉サイドに足をのせ、体だけ温泉に浮かせてしばらく天井を眺めながらぷかぷかと佇んでみる。

全身の力がふっと抜け、あたかもくるくるパーマでロン毛の不気味なカツラをかぶった、中世の貴族の束の間の休息のような安らぎを覚える。

さらにぬるめの温泉へと移動し、お決まりの潜水を敢行する。プールないし温泉にくると、潜水で息継ぎなしに往復、をどうしてもやらずにいられないのだ。

水風呂は一瞬だけにして、お次はジャグジー。二つしかブクブクポイントがなく、一つはオッチャンが、もう一つは僕が使っていたら、もう一人女の子が入ってきて、泡が一切でていないジャグジーとジャグジーの間にちょこんと座ったので、よろしければどうぞ、とジャグジーの一部を提供する。

「ダンケシェン 」いえいえ。かくして奇妙なジャグジー二人でシェア、の図が出来上がる。あまりにも至近距離に、見ず知らずの女(にょ)裸体が存在しているので、無意識にありとあらゆる妄想が脳内で繰り広がるのをどうにか押さえ込み、平静を装う。

結果的にリラックスできたのか、悶々としてしまったせいでよくわからないままに、二時間弱の混浴風呂を終える。

お湯は日本人にはぬるすぎて満足いかないし、日本のスーパー銭湯や温泉には及ばない感はあるものの、この雰囲気、ゴージャスな中世貴族のヅラ感は、日本のどこでも味わえないものだろう。

着替えていると、突然さっきサウナ室で眠っていたらしい韓国人(風)の男が大慌てで、フリテンのまま駆け寄ってきて「何時ですか!?」と訊いてきたので22時前ですよ、と答えるとこの世の終わりのような表情で「ああもう電車間に合わないどうしよう!!」と独り言をつぶやきながら去っていった。

リラックスしすぎたようです。しかし君、せっかくリラックスしてリフレッシュしたのにこれからまた大慌てで駅まで走っていって、汗をかいたら、意味ないじゃん。

ロードトリップ幕を閉じます

サービスエリアで車中泊、もこれが最後だ。だが油断しちゃあいけない。家に帰るまでが遠足だからだ。クリニック及びレンタカー屋のあるノイスの町まで帰る道中、ライン川沿いを通る。

城、城、城。そして城。

こんなに城を作ってお前らはどうしたかったんだ。と問いただしたくなるほど、さもすれば数百メートルに一つぐらいの勢いで城が建っているではないか。

ネコ城やネズミ城なんていうふざけた城もあり、なかなかに面白いが、こうも多いと飽いてくるのが人間ないしジャミラという生き物のサガなので、途中からほぼ素通り。

運転を代わってもらい、眠りこける。

雨のそぼふるなかついに、懐かしの(13日ぶりの)ノイスの町へ帰りついた。

思いかえすとデンマークに訪れたことなど遥か昔の出来事のようだ。それぐらいめまぐるしく毎日移動し、新しいものをみてきたのだ。

レンタカー屋でクーガちゃんともついに別れ、精算をすると何故だか60ユーロほど料金が安くなっていたので、そこはあえて指摘せず素直に請求された金額を支払い、無事、事故も事件もなくレンタカーの旅を終えた。

ありがとう地球!

とりあえず大規模にお礼を述べておこう。なんとなく。

そして快適空間のクリニックに戻り、無料の食事をいただき、翌朝最終検診でたった一発採血をされただけで、全ての行程が終了した。

こんなんで2000ユーロもいただいて、バチの類、当たりませんか?当たりませんか、では遠慮なくいただきます。

やったね・・・やったよ・・・大金手にしたよ・・・

その足で、夜行バスに乗り込みなんたらの都パリへと向かう。ノブさんはトルコへ、マオさんはタイへとぶっとんでいった。散り散りに。


パリ日記

南フランス、とまたしてもドイツ(2009年8月9日〜8月13日)