はるばる欧州はドイツにやってきた理由(わけ)

イスタンブールから飛んで、飛んでイスタンブールから、到着したのはドイツのケルン( Koln )国際空港。何故。そのまま電車を乗り継いでとあるクリニックへ。何故。

実は、「治験」をするために予定をまたしても変更しはるばるぶっとんできたのだ。治験とは、まわりくどく言うと、さまざまな病に苦しむ人々を助けるために身を挺すこと。率直に言うと新薬開発の実験台。

ジャミラ!貴方という人は「開発中の薬なのでその副作用については100%の安全性はない」リスクを冒してまで人々を助けようとしているのね。なんと慈悲深い人間なの・・・

いいえ。お金だよ。治験に参加するとその謝礼としてぬぬぬあんと2000ユーロもらえるのだ。さらに交通費まで支給されるというオプション付き。そりゃあどこからだってぶっとびますよ。

イスタンブールなんてまだましなほうで、バンコクや、しまいには南米から飛んできた方もいてたまげた。恐るべし謝礼金の魔力。

そんなこんなで(すばらしき日本語の底力。この一言で色々な事を省略できてしまうなんて)、健康診断、MRI検査等を済ませ、入院。一発薬を注射されたのち定期的に採決、採尿、血圧を計ったりするだけ。

あとは一日中清潔なベッドに横になりながらネットや読書を楽しむのみ。この旅始まって以来一番綺麗な環境に身を置かせてもらえさらにお金がもらえちゃうという。

さらに食事はいわゆる「病院」食とは全くもって違い、ピザやシュニッツェル(カツのような物体)、クリームパスタ、肉肉肉とライス、ブロッコリースープ、などなど、冷凍食品ではあるものの、この旅始まって以来一番高いカロリーを摂取できちゃうという。

尚さらに、一度だけだが日本食、トンカツ弁当味噌汁付きまで支給され、天にも昇る思いであった。

エジプト〜トルコ間で失った体重をみるみる取り戻し一週間弱で3キロ太りました。

転・がり・込む

最初の入院が終わると次は一週間後の検診、さらにその二週間後の検診で全て終了となるこの治験、入院を終え一週間の自由時間を得た僕は、オーストラリアのタイ料理屋で共に働いていたドイツ人の女の子マレンを訪ねることにした。正しくいうと、図々しくも転がりこむことにした。

ドイツの鉄道会社DBで働くマレンのシフトと丁度いい具合にタイミングが合ったので、ケルンの駅で待ち合わせをし、約二ヶ月ぶりの再会を果たす。こうやって海外で出会った友達とまた会える瞬間は、いつもなんだか嬉しいものだ。

駅の目の前にどかんと存在するケルン大聖堂を見学。でかい。日本では駅の目の前に巨大な寺か神社があったりしただろうか。ふと思う。

一大観光名所の大聖堂をでかいの一言で片付ける僕の感性の乏しさは大目にみていただくとして、マレンとともに電車に乗り込み、マンハイムという駅へ向かう。タダで。

切符のチェック係をする仕事なので、マレンが担当する車両にさりげなく乗り込み、さりげなく溶け込む。あたかも切符を持っているかのように。まるでぬらりひょん。(ぬらりひょんとは、他人の家に勝手に上がりこみ「私は誰だ。」と偉そうにふるまうにんにくみたいな頭の老人妖怪のことである。)

勤務終了まで駅で待ち、車でお宅まで。小さな山の麓の閑静な住宅街に到着すると、マレンママが出迎えてくれた。「ようこそジェイミー。」

現在はママとマレンの二人しかこの大きな家に住んでいないらしく、三階の上等な一人部屋に泊まらせてくれることとなった。

夜はママ手作りのひき肉とトマトのグラタンのようなものをいただく。これがドイツの家庭料理なんですね!とやや興奮気味に尋ねると「えーとこれは、イタリア料理ね。」「そうね。これはイタリアだわね。」

ド、ドイツ人が作る家庭料理という意味ではこれはドイツの家庭料理と呼んでさしつかえないだろう。

穏やかなドイツローカルの日々

マレンも週末は休みだったので、ママと三人で植物園に連れていってもらったり、ハイデルベルグ( Heidelberg )という街へ連れていってもらったりした。

ハイデルベルグは観光客にも人気の場所らしく、驚くほど韓国人と中国人ツアー客であふれていた。一昔の日本人のようだ。韓国、中国の経済状況の発展がうかがえる。それに対して日本人の少なさよ。不況の波に飲まれたついでに彼らに追い抜かれてはしまわないだろうか、と勝手に心配してしまう。

石畳の街並みがお洒落で、特に何をするでもなく歩くだけでも飽きない。そこで欧州版ユニクロとも言えるH&Mへ立ち寄り、ちょっと小洒落た薄手の長袖(ロングスリーブともいう)を5ユーロで購入。小汚い服、しかも半袖か冬仕様のジャンパーしかもっていなかったので、良いだろう。増え続ける荷物・・・捨てられない性分・・・

夜はマレンのちょっと遅めの(二週間遅れって)誕生日パーティと称して庭でバーベキューを開催。マレンの兄弟や友達も集まる。友達の赤ちゃんが可愛い上に面白おかしい動きをするので虜になってしまった。

ひたすらケチャップの入れ物で遊んでいるので、ジャミラとガンQのフィギュアを差し出してみると、怖がりはしなかったものの一分で飽きられ、ケチャップの入れ物を武器にテーブルの下に蹴落とされた。

翌日は飼い犬のラブラドール、ジャボの散歩に車で出かけ、小池でジャボを泳がせる。それを尻目に持参したホットドッグでピクニックをしていると、他の犬にはまったくもって興味関心を示さないが食物に対する執着は凄まじいジャボがそそくさと池から上がってやってきた。

「もはやホットドッグしかみていないみられないみたくない」とその目は語る。

マレンが仕事の日は一人自転車で出かけたり、ジャボの散歩へ行ったり、ひたすら穏やかな五日間を過ごした。

あ、ドイツの家庭では通常台所に洗濯機が備えてあるのだそうだ。違和感を覚えたので尋ねるとそう教えられた。やはり違和感。食べ物と汚れ物を一緒くたに一所に置くなんて。

走り出したらもう止まらないフォード

厚くお礼を申し上げ、またどこかでの再会を約束しマレンと別れる。帰りも運良く彼女のシフトと僕のルートが同じだったので、さりげなく忍び込み、ぬらりひょん。

六日ぶりにクリニックに戻ってきて、再び快適で清潔な空間で、ネットに勤しみ、翌朝の検診で採決、採尿等さっくり済ませ、同じグループだったノブさんマオさんと共にレンタをカーして爆走の旅へ出る。

海外免許証を持っていたのが僕だけだったので、代表で車を借りる。が、この免許証、あと三日で有効期限が切れる。借りるのは今日から13日間。どうなる・・・。

「良い旅を!いってらっしゃーい!」何ひとつチェックされなかった。うえに、車も無料でグレードアップしてもらえた。通常ならカーナビは別料金で100ユーロ近く払わなければならないのだが、それももれなくついてきちゃった。車種はフォードのKUGAというブラックのボディがグラマラスなあいつ。

いざ出発欧州弾丸の旅。初の左ハンドルを右車線運転に若干とまどいつつ、徐々に慣らしてゆく。音楽無しでは運転できないタチなので、電気屋でipod用トランスミッターを30ユーロも出して購入。が、音質の悪いことよ。

初めはそれなりに聞こえていた音が最終的にただのノイズに化けた。あん畜生。

夕方に出発した今日の目的地はミュンスター( Munster )。ノブさんのお友達がそこに住んでいるらしく、一泊させてもらえることになったのだ。幸運。

ドイツの高速道路、通称アウトバーンは全て無料、それはいいのだが、やたらに工事中の箇所が多く、著しく車線が狭まること矢の如しでイラっとする。

ナビのおかげでスムーズに目的地に到着でき、ノブさんのお友達マーシーさんと合流し、お宅へお邪魔いたします。

そして唐揚げとジャーマンポテトを作ってもらい、皆でぺろりといただく。やはり日本人は日本食から離れられない運命にあるのだね。幸せ感じた夏の夜。

北上北上、え出国?

翌朝、ぼうっとしてハミガキをし続けたために若干ハミガキ粉を飲み込むという誰も知らないハプニングに見舞われつつ、マーシーさんにお礼を言って出発。

ブレーメン( Bremen )という所を目指す。二時間弱で到着、一体ここはどこ?何?「おまかせします」と土地勘と地理の弱さを理由に、行き先はほとんどノブさんマオさんに任せているのだ。

きくとここは、ブレーメンの音楽隊で有名な場所らしい。うっぷ、たった今ウィキペディアで調べた情報によると、グリム童話の一つらしく、年をとったイヌ、ネコ、ロバ、ニワトリが共謀して盗人達の手柄を横取りしてご馳走や、挙句の果てには家まで奪うという、とってもチャーミングな物語らしい。

その横取り40万的な動物達の銅像が、ここブレーメンの町にあった。ニュアンスとしては桃太郎に近いのだろうか。悪者をやっつける風にみせかけ財宝はオレ様がいさざくぜ!という。

こういう不条理な、でも夢のありそうな物語、私は好きです。

が、これはたった今知ったことで、当時何も知らなかった僕はとりあえず皆がうようよ集まるその銅像を撮影し、近くの教会もちらっと見て周り、さっさとクーガちゃん(車)のもとへ帰ったのであった。

運転を交代しつつ、さらに北上。フレンスブルク( Flensburg )という町へ。後部座席で熟睡したり熱唱したりと好き勝手にやっていると到着した。

バルト海に面した港町なので、ヨットやボートや何やらがうじゃうじゃと、言い方が悪いなざわざわと、いやぼらぼらと停泊している。丁度陽の沈む時だったので何ともいえない素敵な光景が生まれた。

パイレーツがらみのマーケットへ立ち寄る。パイレーツがらみの格好をした人達がソーセージやキャンディ、グミな雑貨などを売り、パイレーツがらみの格好をしたバンドがライブをやっている。

平和やなあ・・・まるでこの世に戦や争いなんてないかのような平和なたそがれ時のフレンスブルクとパイレーツ連中。これがいつまでもどこまでも続けばいいね。

フレンスブルクついでにそこから30分程の距離に位置するグリュックスブルク( GLUCKSBURG )という町へクーガちゃんを走らせる。

きくときころによると、何かしらの、何がしかの城があるらしい。その名もグリュックスブルク城。

池と緑に囲まれた場所に静かに佇む古城。水面に映えた城が美しく、ひとしきり撮影。到着時刻が遅かったために内部見学はできなかったが、それでも充分に美しい。が、どこかレストランみたいな雰囲気が漂う。城というよりもむしろ・・・

レストランじゃん。

城の一部にレストランを設けてしっかり営業してらっしゃいました。道理で。メニューを見る限り我々貧乏旅行者には似つかわしくない金額でしたが、そもそもこの小汚い格好に古城のレストランが似つかわしくないので、大人しく退散。

目的地をビルン( Billund )という町へ設定して夜のドイツをひた走る。

ん?なんか、看板の文字とか、通貨変わってない?変わってなくなくない?

ゲ!!もう入っちゃってるデンマーク・・・


デンマーク日記

ドイツ(2009年7月13日〜7月31日)