試みる!

ついに国境を越えるときがきた。昨日、俺明日ラオス行くで、と母親にメールをしたらば 「明日ロドスに入ると送ってきたんかね・どこの国に?」と謎の返信がきたその国ラオス、いやロドスに!

渡し舟に乗り込み、いざ行かん!ミルクティ色に染まったメコン川を悠々と、眺める暇もなく「あ」っという間に到着。まあ。川渡るだけですから・・・。

さっきまでのドキドキはどこへいっちゃったのか。イミグレで入国スタンプを押してもらい、ツアーガイドの自称ミスターインフォメーションという男から諸々説明を受け(あ、申し遅れましたが私この度ここフエイサイという町からルアンパバーンという町までメコン川をボートで南下するツアーに参加していたのです。)、両替をする。

なんせ初めての国境越えだもんで、とりあえず手持ちのタイバーツを全て差し出したら、おびただしい数のラオス(ロドス)キップ札が!富豪になった気がして宿でこっそり「札束を扇子状におっぴろげ仰ぐ」という前からやりたかったことを実行する。

その後3人で飯を食いにでかけ、あたりを散歩する。なるほど、会う人会う人「ラオス(ロドス)はのんびりしたところ」と言っていたのが分かる気がする。夜の八時には真っ暗になり、とても静かで穏やかだ。遠くから自宅カラオケを家族で楽しむ音が聞こえる。

そして特筆すべきは商店でみかけた中国産のクッキーその名も「金曲奇」。「金曲奇て!!奇跡のお菓子やな!」感動のあまり勢いで買って帰り早速神妙な面持ちでいただく。パッケージによると数種類の奇跡的な味が楽しめるはず、なのに、「なんか全部杏仁豆腐みたいな味すんで」あはっ、これはこれで奇跡的!

雨にも負けて、風にも負けて

翌朝7時起床、ハミウン(歯磨きとウーンコーの略)をしようとしたら水が出ない。宿の男を呼んで直してもらい、スッキリしたのちサンドウィッチを朝食にいただく。ここラオス(ロドス)は過去、フランスの植民地であったため、フランスパンがそこかしこに転がっているのだ。そのフランスパンで作ったサンドウィッチの美味いこと!お好みで具をチョイスできるのも原宿のクレープ感覚でウキウキするよね。

舟で食べる用にもう一つサンドウィッチを買い、乗船。いざ出陣。とても古風な方でらっしゃるんですねこのお舟。なのにそれなのに定員の類を一切無視した乗客の数。この豪華客船は沈みゆく運命にあるのかしら。

大丈夫。ここはラオス(ロドス)だから氷山もないし甲板の先っちょで「あたし空飛んでるみたい」とかほざくこともできないし。大丈夫。というわけで、遠足気分で盛り上がり、トランプを。トランプと言えば大富豪(またの名を大貧民)。あははまた俺大富豪だよまいっちゃうな〜。

パラパラ

ん?パラパラって聞こえたのは何なに?すこし前の渋谷のティーンが奏でてたハーモニー?まあいいや気にせずやろうか大富豪はやく一番いいカードよこしなさいよ大貧民

ザーーーーー

ザー?ザーっていうのはおかしいでしょう。ここラオス(ロドス)ですよまさか、ねえ?ははは、雨ですよ。大急ぎで豪華客船の雨除けカーテン(またの名をブルーシート)をおろす。加えて暴風。加えないでよ・・・

しかしこういう緊急事態で皆が一丸となるのは世の常。男どもが体をはって雨除けを押さえつける。女は、「さあ、泳いじゃうわよー!」びしょびしょに濡れながら楽しくなっちゃっている。分かるよその気持ち。台風の日なんか楽しくてしょうがないもんね。「警報でんかな〜。警報出たら帰れるで!先生暴風警報まだあ?」これは児童生徒の決まり文句だったよね懐かしいなあなんて思っているうちに雨あがる。

喜びに沸くボート。落ち着きを取り戻し再び大富豪。流れ行く景色がまるで邪馬台国(みたことないけど)のように原始な世界で、始めのうちは写真を撮ったり眺めたりしていたのだが、大富豪の楽しさにはかなわなかったようだ。

陽がかげり、トランプのカードがみえなくなったころ、ついに目的地ルアンパバーンに到着。ルアンパバーンに何があるかなんて知らないけど、楽しみだ。上陸、とか到着、とか、ドキドキするのだ。

するとどこからともなく客引きがやってきて、値段交渉の末そこにキメる。複数で旅をしていると宿代が安くすませられるのがいい。さて、ナイトマーケットへむかってみる。腹がへっています。屋台で豚串と魚の丸焼きとカオニャオ(もち米)をいただく。

う、うまい・・・この魚の丸焼きっぷりと塩加減がたまらない。カオニャオ(もち米)を素手でつまみながら魚。最高ではないか。豚串はゴムのような硬さだった。昨夜食べたチキンの炒め物も鶏小屋の味がしてなんだか煮え切らなかったから、ここロドス(この際もうロドスで)では肉より魚がいいということだろう。腹を満たしいい気分で散歩。すっかりいい気分だもんで全く必要ないであろうと思われる謎の小顔(小学生が家庭科で作ったマスコットのような物体)を購入。女の子が一所懸命作った感がたまらなかったから。一通りみてまわり宿に帰り、就寝。

宅八郎ではなくて

ん眠い。何故私たちが今もち米片手に路上で棒立ちしているのかというと、ロドスのお坊さん達の托鉢を拝むため。ええ、朝の5時です5時。

太鼓の音が聞こえてきた。そして目に飛びこんでくる鮮やかなオレンジの袈裟、袈裟、袈裟、坊主!若干緊張しながらお坊さんの持つ骨つぼ、じゃなくてカゴにもち米をひとつまみづつ入れていく。こうして彼らは日々の糧を得る。人々はお坊さんに差し上げることで穏やかな気持ちで一日をスタートさせられる。多分。

朝から清清しい思いだ。屋台であげパンとオーバルティンをいただく。オーバルティンというのはミロのような粉末のもので、それにコーヒーだかお湯だかと練乳を投入して飲む。甘い。この上なく甘いのだが、この上なく幸せな味がする。それからというものの一日の計はオーバルティンにあり。と毎朝飲むようになったのは言うまでもない。だったら言うんじゃない。

慣れない早起きなどするもんだからばっちり二度寝しちゃって10時頃起床した3人。また腹が減り市場へ。野菜に果物、なんでもある。しかし肉屋の激しさよ。冷蔵庫なんて使いやしないよ。肉、どーん。ハエ、ぶわー。それを前に涼しい顔で「ビニール袋が先端についた棒」をふりまわす女の子。日本ならこんな不衛生なところのお肉、怖くて買えたもんじゃないわ!!と奥様方は声を荒げるだろう。でもロドスだから。その肉屋のすぐとなりで涼しい顔をしてヌードルを食べることにした。タンタンメン風でうまい。

ツーリストらしき立ち居振る舞い

午後。プーシー?という知らないがちょっとした見所らしい場所へいってみる。入場料20000キップ(約200円ちょい)もかかるということでしばらく悩んだが、せっかくなので入場。

300段以上ある階段を登ると町を一望できた。気持ちいい。高いビルなどひとつもなく、緑が多く車の少ない素敵な町だ。ここでスペイン人の女の子に出会う。カゴに入れられた鳥を次々に逃がしている。

これを解き放ち自由にしてやると何やら縁起がいいらしい、のだが、鳥はそこらへんにいるスズメみたいなやつで、もともと自由な鳥たちを捕まえカゴにいれ「解き放つと必ずやいいことがありますよ」と商売しているおばさんから買い占めたらしいのだ。鳥ちゃんがかわいそうだから。なんていい子!「手伝ってくれる?」ええ喜んで!さあ自然におかえりお前たち。

その後ブッダの足跡を拝みにいってみる。僕の行動はほぼ全て「てみる」だ。何も知らないって、時に愚かです。それにつけてもこのブッダの足跡の大きさは尋常じゃない。これが実寸だとしたら悟りを開き教えを解いて歩く度に彼は町を破壊していたにちがいない。

すると日本語を勉強中のロドス人と突如出会い、会話を楽しむ。「ひがし」がどうとか話しているとそれに反応してそのロドス人青年トゥーンがなにやら笑いだした。一体ぜんたい何がおかしいのかきいてみると、「シガシ」という言葉がラオ語で「ウーンコーしている」を意味するらしいのだ。なんと!言葉の不思議さを知る。そしてはずかしがりながらそう説明するトゥーンに純朴さをみる。

また夜にマーケットで会う約束をして別れ、歩いていると豪華客船をともにしたイスラエル人の一行と再会。「滝みにいかへん?」いきます。

約一時間トゥクトゥクに揺られ景色はますます萱葺き屋根の日本昔ばなし風に。到着。歩く。マイナスイオン指数のかなり高そうな滝スポットへたどり着き、さらにその滝の上に登る。グッドヴュー。

もっとマイナスイオンを!興奮した一行は下へ戻り滝つぼへ、ダイブ。いい大人が群がり次々にダイブ。お、おっと・・・水着姿のあんたは・・・同じく豪華客船をともにしたイスラエル人のノア!とめどなく美しい。マイナスイオンを浴びてさらに目の保養もばっちりしたところで町へ帰る。

夜はサウナへ。ハーバルサウナがお手ごろ価格で体験できるらしい。「お手ごろ価格」は「タダ」の次に好きな言葉です。布を借りそれを腰に巻きさあハーバルの世界へ。

「こんばんは・・・」肉と肉が触れに触れあっているここって確かハーバルの世界だよね?なんとこのサウナ、一畳ほどのスペースに6人収容タイプ。狭・・・。

肩身の狭い思いをしつつも解毒ができた気がしてスッキリ。またもや屋台で魚を喰らい、トゥーンとの待ち合わせ場所へ。いない。連絡先なんて知らないし、ああもう会えないかなとあきらめて帰っていると、会えた。会える人には会えるようになっているんだな。世の中。ひとしきりおしゃべりして帰宅。

やばいのかお前はそんなに

翌朝は6時に起床、朝のオーバルティンをすませ荷物をまとめバス停へ。本日、「ロドスはいいよ」という人のそのほとんどが「あそこはやばいよ」と付け加えていた町バンビエンへ向かうのだ。

ローカルバスのチケットを購入したのになんらかの手違いでVIPバスに乗り、セレブの面持ちで出発。ポテチをくらいながら道なき道山なき山を進む。途中運転手がカニやスイカを買うために急停車しちゃうあたりがなんだか、良い。良いヴァイブ。

5時間程走りぬいた先に町らしき物体が。ついについたぞバンビエン。同じくバンビエンでおりた旅人共とトゥクトゥクをシェアし宿へ。ほほっ!一部屋一部屋がコテージ風で広い!ステキ!リバービュー!そしてなにやら向こう岸にたたずむ邪馬台国仕立てのバンガロー。あっちもよさげ・・・川辺のお店その名もSAME SAME BARでマンゴーシェイクを注文し、水に足をつけながらのんびりドリンク。昼寝。

のんびり散歩したり、レンタバイクの値段を調べに行ったら「このバイク一日いくらかしら?」とヨーロピアンのおばちゃまに尋ねられたり、いいえ私店員ではございませんので分かりかねます、ヌードルを食べたり。

夜は夜とてレストランへおもむき、「今日は贅沢」とピッツァを食べながらミニシアター系映画をみたりする。そう、ここはそういう町らしいのだ。ほとんどのレストランの座席が、寝ながら食べちゃうスタイル。ローテーブルにローソファー。べろーん。

川とか流れてみる

翌日のっそり起床しのっそり朝食サンドウィッチをいただき、裏山へ登る。そして予想以上に汗をかき登頂。見晴らしがいい!いいじゃないか!と興奮していたらハチに手のひらとケツを刺され凹み下山する。

このアクティブさとどまることを知らず、勢いそのままにバンビエン名物チュービングへ。名物、というか、他に大してないのだ、べろーんとするのが主な町だから。ところでチュービングとは何ぞや。読んで字の如く、チューブするのだ。タイヤのチューブにのっかって、川を流れるのだ。洗濯にきたおばあさんに拾われたなら、輪太郎と名づけられることになるだろう。もろこし輪太ろ・・・

さあ、今日はとことん流れに任せようぜこの身を!すると突如アトラクションが。ターザンの「ア〜アァ〜」のあれだ。ロープにつかまりア〜アァ〜と飛んでゆき最終的に川に落ちる寸法のあれだ。

一同チャレンジ。僕、ここでも再会したイスラエル一行、サトシさん、と順調にア〜アァ〜していき、サリー。

ア〜アァ、あ?えぇ!!?

腕力が足りなかったのかありすぎたのか、ロープを放すタイミングを失った彼女は勢い余って何故か空中で一回転したのち川へ消えていった。一瞬そういう技なのかと皆たいそう驚いたそうな。いやあれは凄い回転だった。「ぶいん」まさにぶいんだった。

こういったアトラクションが随所にちりばめられたこの川を、時にターザンし時にウィスキーラオを飲まされ酔っ払い、流れゆく。山と、川と、空。ハッピー。色んな意味でハッピーなこの町の「やばい」の意味を理解し始める。

慣れないことはするものではないのだ

そして未だにアクティブさを失っていない一行は翌日、ずっと気になっていた川の向こうの邪馬台国式バンガローへ宿をうつし、バイクをレンタルして洞窟探検へ向かう。初期の携帯電話並みの大きさのヘッドランプを借りていざ入洞。

軽い気持ちで入ったら、本気の洞窟だったよここ。せまいあついふかい。行き着いた先になにやら怪しげな水たまりが。底なし風水たまりが。濁っていてよくみえないその水たまりで、何やってるんだあんたらは。ヨーロピアンの中年夫婦が泳いでらっしゃいました。疲れて戻り、「もう洞窟ええわ・・・」と数ある洞窟を次々に攻め入ることをやめにする。もうお腹いっぱい。

ドライブを楽しもうじゃないかとバイクでるんるん走っていると、坂でぬっこけてバイク破損。キャー!!!まずい。折れた部分をそっと拾い上げ、とりあえずドライブ再開。ひとしきりるんるんし宿へ帰る。さあてここで登場しますは旅の秘密兵器「あろんあるふぁー」。ウィーン、ガチャ。完了。

すばらしき瞬間接着剤の力。もしものために無駄に荷物増やしておいてよかった。ドキドキしながらあくまで平静を装い、バイク返却。「コープチャイ!」はっ!バレなかった・・・生きててよかった・・・

おいてきぼりプンプンプンとは竹中直人の談

そんなこんなでバンビエンの日々はあっという間にすぎゆき、サトシさん、サリー、新たに出会ったミキさんは次なる町、首都ビエンチャンへと向かうらしい。らしい、というのも、バンビエンに根を生やしてしまった僕は一人残ることにしたからだ。バス停まで見送り、一人ハンモックに揺られ昼寝をしたり、サンドウィッチとパインシェイクをいただいたりなどして過ごす。

んが。んが、なんだか、つまらない。宴のあとのあの物寂しい感じ。ホームパーティを執り行いみんなが帰ったあと一人洗い物をするあの感じ、なのだろうか。やることがないので20時には床につくという今時の小学生より優秀なライフスタイル。

遅れをとらまいと翌日ビエンチャンのバスに乗り込んでいたのは何を隠そうこの僕です。ちょっと渋めに外を眺めていたら、部品のとれた窓が度々頭に落下。度々渋めに痛がる。それをみてロドス人に笑われる。渋い。

キャピトルへ行きたいのですが

4時間程で町に到着。どこだろうこの「町」は。「ビエンチャンですけれど」・・・。首都はどちらに?と思わず質問してしまいそうになる。首都ビエンチャンは、ちょっとした町だった。

さて、遅れをとらまいと後を追ってここまできたはいいが、またもや何も情報がない。通りすがりのお坊さんや警察さんに宿はどこかとたずねるも、英語が伝わりきらないようすで、とりあえず指さされた方へ向かう。

どうにかホテルをみつけチェックイン、しかし高い。5ドルだなんて。すぐさまネットカフェへ行きロドスはビエンチャン周辺の情報を検索。目ぼしい宿をみつけ、川沿いの屋台風レストラン、レストラン風屋台でチャーハンとコーラで一人乾杯。となりのロドス人ファミリーとおしゃべりして帰宿。

あ、あつい!!かゆい!!!

ファンが壊れてあついわ蚊が狂喜乱舞してかゆいわ悪夢みるわで踏んだり蹴ったりな一夜をすごし朝をむかえ、今より安い宿へ移動。が、一杯だと。それでは隣の宿へ。

すると、ごく自然な感じに、二日前に別れた皆と再会。やっぱり会える人には会えるようになっているのだ。また皆でバイクを借り、ブッダパークというところへ行ってみる。

ブッダブッダブッダ。ブッダパークの名のもとに、色んなポーズのブッダ様がそこかしこに。軽くアドベンチャーし、帰りに急遽、ブッダパークで出会ったイタリア人とビアラオ工場へ立ち寄る。

できたて冷えたてキンキンのビアラオをいただきながら、見学。ロドス人の仕事のあとの喉を潤しているビアラオが今まさにここで作られているのか。素晴らしきかなファクトリー。おまけにビアラオコースターとビアラオステッカーまで「タダ」でいただいちゃって、まんもすやっぴ。

まんもすついでにタットルアンという金ぴかのお寺へも立ち寄る。中に入るのに5000キップ(約50円ちょい)いるというので入らず、外から写真をばっしゃばしゃと撮り、「タダ」で入れる隣の寺へ行き休憩。していると井戸端会議だかなんだかで集まっているおばちゃんや若い女性達がお水をくれた。優しいね。

夜はまたしてもサウナへ。バンビエンで会ったドイツ人らと再会。汗にまみれながら会話を楽しむ。

翌日はバイクで市場へ行ったりバスの時間を調べたり大使館へいったり、ネットをしたり、諸事をすませ、夕方、メコン川沿いをのんびりとドライブ。

なんだろう。穏やかに沈む夕陽とそれに染められた町が、人が、ふと懐かしい気持ちにさせる。昭和の夏休み、のような懐かしさだ。ロドスは首都にきてもロドス。どこまでもロドスなのだ。まるで時をさかのぼっているような感覚。

振り返るなよ

あら?本当にさかのぼったのかな?すこし前に見たことあるような光景が眼前に広がっているけど、あら?ここバンビエン。性懲りもなくバンビエン恋しさに舞い戻ってきたやつどこのどいつだ俺だ・・・。ついに、本当に皆と別れた。それぞれ皆次なる目的地へ進んでいったというのに、後退するってなにごと・・・。

い、いいのさ時には振り返ったって。そそうだバンビエンにパーカー忘れてきたからとりにきたっていうきちんとした理由もあるしそれに・・・要はただ戻ってきたかっただけです。

結局パーカーは行方知れず、また同じようにのんびりとサンドウィッチとシェイクでぶたぶたする。

しかし、あんなに恋しくて戻ってきたのにもかかわらず、いざ戻ってくると、特にすることがない。それに気分もノらない。やはり、前へ進まなければならないのだろう。ずっとここにはいられない。人生、今しかないのだ。それに、未来へむかって進むことはできても、過去へ戻ることはできないのだ。いざゆかん!次なる目的地へ!

目的地とは本来バスのおばさんに容易く変えられるものではない

ハノイへ。

バスのチケットを購入、ベトナムの首都ハノイへ向かう。5時間後、到着!したのはビエンチャン。バンビエンからハノイ行きのチケットを購入したって、結局ビエンチャンに戻ってそこでバスを乗り換えるのだった。これぞ無駄足無駄金の真骨頂。そこから別のバス停へ移動し、今度こそいざゆかん!

フエへ。

なななななななぜ今この瞬間僕はハノイではなくフエ行きのバスに?ちょっと時をさかのぼってみよう。過去へ戻ることはできないけど思い出すことはできるついさっきの出来事。

バス停で無事ハノイ行きのバスを見つけ勢いよく乗り込んだら、勢いよくおろされたのだ。「もうバス一杯。」ちょっと待ていおっさん、あのね、僕ね、前日からバスのチケット購入してたんです、ほらここにハ・ノ・イって書いてあるでしょほらほらよくみて。

というわけで再び乗り込・・・もうとしたらまたおろされた。ハノイいくんや!チケット買うとんじゃ!どゆことや!「一杯!一杯だから無理!」やーかーらー、チケット!!

この押し問答をしばらく続けているとどこからともなく、この間みかけた太った置物にそっくりなおばさんが登場。そして巨大なボリュームで「フエー!フエー!」と叫びだした。え応援部かなにかの方で?それにしては鉢巻も学ランもボンタンも着けてないし。一体何の御用で?

「フエー!フエー!」さらにやまない謎のエール。そして僕のチケットをとりあげ、「HANOI」と書かれた部分を二重線で消し「HUE」と書き直した。ああなるほど!さっきのエールは応援じゃなくて!フエに行けよこのファッキンジャップってことか!あっははー気づかなくてゴメンゴメンゴ!と素直にフエ行きのバスに乗る馬鹿がどこにいやがるんだといわれたらここにいます私。もうこの連中にゃ何言ってもだめだ、怒りを通り越した呆れと諦め。

心身ともに木っ端微塵でお願いします

同じくフエ行きに乗らされる羽目になったブラジル人と、走り出したバスの中「あいつらまじ・・・」と愚痴を言い合い、疲れてねむ・・・・っていたら体が宙に浮いたよっ

悪人の次に襲ってきたのはそう悪路。バウンスバウンス。僕がニューヨークかどこかのダウンタウンにはびこるヒップホップ好きのギャングなら、このバウンスたまらないでしょう。バウンスついでにコンビニ強盗とかして発砲事件とか起こすでしょう。でも見て、僕は生粋の日本人、というよりは「現地人」といった感じだけどとにかくギャングじゃないのでこのバウンスは苦痛以外のなにものでもない。

腰を痛め心も痛め、ようやく停車したバス。時刻は午前3時。運転手、突如通路にハンモックをぶらさげ、すやすやとお眠りに・・・おやすみお前、運転ご苦労さま。疲れたろうねえ。って。は?仕事放棄するなよここで!

と思ったらどうやら7時にならないと国境が開かないらしく、ここでそれまで仮眠するらしいのだ。この、不気味な倉庫を前にした路上で。

バスの中では直角にしか座れない上に暑く、寝られたもんじゃないので一同外へ。アスファルトへ体を横たえ、寝る。バスよかましだし・・・見上げた空には月。きれいだ。あ!流れ星?ちがう、ホタルだ!ははっ嫌なことあったけど、この月とホタルみたら忘れちゃうや!はははっホー、ホー、ホータルこいってへへ

パクっ

通りすがりのアヒルにホタルは飲まれました。かすかな癒しさえも奪われたロドス最後の夜は、自然界の、そして生きていくことの厳しさをとくとみせつけてくれたのであった。


ラオス(2007年3月18日〜4月1日)

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