教えておじさん
スイスに入ってしばらく走る。と到着したのはマイエンフェルト(
Maienfeld
)という町。ヨーロヨーロヨッヒッヘーリーヨッヒッヘーリーヨッヒッホ!
アルプスの少女ハイジの舞台とされている町だそうだ。ハイジの家やおじさん、ペーターの家などがある。が、ちょっとしたハイキングコースになっているため全てをみてまわろうとすると往復二時間かかっちゃうため、一番手近なポイントで満足することにする。
アニメの映像ほぼそのままの風景が広がるスイス。クララがどの辺りで立ったのか気になるところだが、実はこれヨハンナ・シュピリという女性が描いたお話しで。つまりはフィクション。
じゃあなんでこんなハイジの町が存在するのか疑問だが、観光という一大産業の名のもとにその疑問は封じ込めておこう。
ヤギや、おじさんそっくりのおじさんが現れたのには若干興奮した。
そういえば昔社会の授業で、丸一時間使ってハイジオープニングのあの空中ブランコのひもはどこから吊るされているのだろうか、と問いかけられたことを思い出した。それは確かに気になるところだけれど、先生に、何故そんな問いかけを授業中にしてきたのかと改めて問いかけ返したい。今更に。
ハイジの町とおさらばして、またしても一般道を走るクーガ。アルプスの山々を横目に。気がつくと随分と高地を走っているではないか。陽が陰り急激に寒くなった。ほんの少し、中国からチベットへのあのバス五日間の道のりを彷彿とさせる。
いろは坂並みのうねうね道の途中、尿意を覚えクーガを停めてもらい、アルプスの大地とひとつにな、ろうとしたその時、後方から車両が。
今にも大地に降り注ごうとした恵みの雨を、必死で食い止めHold On。
クーガに避難しもう少し人気のない場所で、再びチャレンジ一年生。
ヨーロヨーロヨッヒッヘーリヨッヒッヘーリーヨッヒッホ
口笛はなぜ 遠くまできこえるの シャーーーー あの雲はなぜ わたしをまってるの シャーーーー
すっきり大地とヨーデルを奏でたところで再出発。もう辺りは随分暗い。できれば安い宿をみつけて一泊しようと目論み、所々に点在するペンションをノックする。
んが。代表できいてきてくれたノブさん曰く「態度悪い。なんか嫌やわ〜」とのこと。そりゃあ陽も沈んで真っ暗な中突然訪ねてきたのが小汚い東洋人だったら、若干気が引けるかもしれないが、客商売なのにそんなあからさまに怪訝そうな顔をして追い払うなんて、ひどいじゃんクララ。クララじゃないかそうか。
結局数軒尋ねるも全て似たような反応だったのであきらめてもう少しクーガを走らせる。
と運良くキャンプサイトへ辿り着き、さっさとシャワーを浴びて、車中にて一泊。
のどかな町のフリーコンサート略してフリコンで日本人発見
目を覚ますとマオさんが既にキャンプサイトを出て運転を始めており、どこぞのパーキングエリアに停まった。9時。そこでハミガキやトイレ、朝食を済ませスッキリ。そびえ立つ山々をバックに食べるサンドイッチは、まずくてもうまい。
着替えていざ出発するとすぐにシオン( Sion )という町にさしかかった。城がみえたりしてよさげだったので、立ち寄る。
うわあ、素敵なお城へ続く道だなあ
と山のふもとを歩こうとしたのだが、どうも道しるべ的なものが見当たらない。それもそのはずこのはず。
ここ墓地ですやんさあ
墓地ですら日本のような陰鬱なものではなくどこかのどかさを感じさせる仕組みになっている、スイス。
今一度城へ向かう。この町も全体的にのんびりとした時間が流れていて良い。と、どこからかソプラノヴォイスが聞こえてきた。
近くの教会でフリーコンサートがあるらしく、そのリハーサル中らしい。そっとのぞいてみてごらん。
めだかでも良かったんだけれど、ソプラノヴォイスの発信口はなんと日本人女性だった。留学か何かでもしているのだろうか。素敵なことだ。そして素敵な声だ。
11時の開始時間まで少しあるので、先に城と丘の上の教会を見に行く。思っていたより傾斜がきついので、城へはいかず教会だけに。道端に設置されていたイヌのウンコを入れるためのビニール袋がちょっとお洒落だったのでいただく。おそらくは「ウンコこちらへ」みたいなニュアンスのことが書かれているのだろうが、それがフランス語とドイツ語表記になるとどこか憎めない存在。
教会は古くこじんまりとした雰囲気で、気に入った。そこから眺めるシオンの町もなかなかのものだ。ジャミラのフィギュアで記念撮影。
コンサート会場の教会に戻ると、既に始まっていた。ドイツ人だかのバイオリンが終わったあと、日本人女性のソプラノが響き始めた。うむ。上手い下手はよくわからないが、いい声だ。晴れた夏のスイスにぴったんこかんかんだ。ごちそうさまでした。
ちょっとフランスはさみますモンブラン
シオンの町を出て走りだすと、徐々に頂部分に雪をまとった山が見えてきた。夏なのに。ここは結構暑いのに。そんな標高差で雪が降るほど寒いのか。
雪山に気をとられているうちに国境に到着。忘れていた重要な任務、「スイスでスイスナイフを買う」をぎりぎり実行できた。迷彩柄のかっくいいナイフが15ユーロ。中々かっくいい買い物をした。
スイスを出て今度はフランスに入った。次なる目的地はシャモニー( Chamonix )。そう、モンブランのそびえ立つ町だ。もうあちらこちらに雪山で一体どれがモンブランなのか分からなくなっているが、かまやしない。きっとどれかはモンブランだから。
いよいよシャモニーに到着。登山やスキー、パラグライダーなどスポーツでも有名な場所らしく、多くの観光客で賑わっている。車をとめていざ探すのはそう、モンブラン。
「モンブランでモンブラン食べたって言いたいじゃない。」
モンブランで紋舞らん観たって言っても良かったのだけれど、それはフランスのアフタヌーンには似つかわしくなかったので、スウィーツのほうのモンブランを探す。カフェやパン屋をみてまわる。
ない。日本ならコンビニでも手に入るほどメジャーな商品、モンブラン。それが、本場のモンブランにはない。一体どういうことだ。たった今ウィキペディアにて調べた情報によると、フランス人が考案した説と、日本人が考案した説がある。
日本人のような気がする。だってモンブランにないんだもんモンブラン。フランス人が考案して広まったならもっと容易く見つけ出せていいはずだろう。
結局モンブランでモンブランを食す夢は叶わず、妥協した上で白いメレンゲのタルトを、モンブランをバックに食べる。そもそもモンブランは白い山の意なのだから、むしろこのタルトのほうが正しいのかもしれない。きっとそうだ。確かにそうだ。と思い込む。
しかしこのメレンゲ、一個まるまる食べると甘くてむつこい。苦いのください苦いの。
もうモンブランに思い残すことはない、と出発し、マオさん希望の、「モンブランの山の中を突き抜けるトンネルを運転したい」を実行する。
この巨大な山を貫通させ、一気にフランスからイタリアへと向かわせるというのだから、人間というやつはやることなすこと恐ろしい。モンブランを抜けるとあちらはモンテビアンコになるのだ。フレンチからイタリアンに。
トンネル通行料が33ユーロもしたのには目玉を二回ほど吹きこぼしそうになったが、これも人生に一度きりかもしれないから楽しめばよかろう。
片側一車線なので制限速度は80km、一定の車間距離を置いて走らねばならない。6kmのトンネルをどぅんどぅんと突き進む。
と、来たよ。突然国境。
欧州はことごとく国境越えの楽しみが薄い。が煩わしいパスポートチェックよりはましだ。もうモンテビアンコだ。ボンジョルノ。
イタリア日記へ
スイスと少しフランス(2009年8月6日〜8月7日)