怖づ怖づナイロビ

ケニア側のイミグレーションにてビザ代25ドルを支払い入国。ケニアですケニア。首都ナイロビ行きのバスを探して歩いていると、ゲート近くのポリスだかアーミーに止められ、パスポートチェック。「イエローカードは持ってるか。」

久々求められたので喜んで差し出す。「ふむ。2007年に接種ねえ。これ、切れてるぞ。」

いいえ。黄熱病の予防接種は確か十年間有効だったはずです。問題ないですよ。ここでもし、え!?本当ですか!?期限切れてますか!?ああどうしよう。と答えたらすかさずワイロを要求してくるつもりだったのだろうが、そうは問屋が卸さないのでイチャモンのつけようがなくなったポリスだかアーミー。

「飯代くれよ。」

ま!率直ですこと!ニヒヒー。と不敵かつ不適な笑みを浮かべながらそのまま歩きだす。笑っておけば大概大丈夫なことを覚えました。

少し歩いた先のカンパラコーチというバス会社でナイロビ行きのチケットを購入。「800シリングです。」タンザニア、ウガンダと同様シリングが使われているのだがそれぞれ価値が違うためもう通貨換算がめちゃくちゃになってしまった。確かケニアシリングは1.17倍で日本円だから、936円。

このバス代が高いのか安いのかもよくわからないので、チラっとチケットの台紙をのぞきこむと、他のチケットには700と書かれている。これ700ではないですか。800と違うでしょう。と指摘すると意外にもあっさりと700になった。なった、といってももともと700なのだけれど。

11時頃バスがやってきて乗り込み出発。窓が高い位置にあるバスなので風があまり入ってこず暑い。このタイプのバスの意図がつかめない。何のためにこんなに高い位置に窓を設置しているのだろうか。車窓から飛び出す自殺志願者が多いとも思えないし、第一窓からあれこれお買い物をするとき手が届かなくて非常に不便なのだ。

日本車だ。

15時前に昼食休憩をはさみつつ走り続ける。景色は単調であまり面白くもないのでジャミポッドをきいたり眠ったりして過ごす。

ナイロビはまだですか・・・。陽が暮れ始めたではないか。基本的に夜に知らない町へ到着するのは避けたいタチなのに、しかも今度はアフリカ三大危険都市、ナイジェリアのラゴス、南アフリカ共和国のヨハネスブルグに次ぐナイロビなので尚更避けたいのに。

すっかり暮れちゃった。

若干手に汗にぎりつつ到着した頃には時刻は21時をまわっていた。カンパラコーチのオフィスでおろされる。ダウンタウンど真ん中です・・・。

可及的速やかにこの場を切りぬけねば・・・。今度もまたカウチサーフィンにて現地人のお宅へ泊めてもらう手筈をとっていたので、とりあえずタクシーに乗り込み、事前に教えてもらっていたその人の職場の住所へと向かう。

近!「でもお客さんこれを荷物持って歩いてたら絶対襲われてたよ。」と運転手。携帯電話をかりて、カウチ主のイグナシアスという人へかける。もう仕事を終えて家に帰っていたのだけれど迎えにきてくれるという。ほっ。

と一息つこうと思った瞬間。「こんなところで何してるの?」娼婦臭を全身から漂わせるナオン現る。友達待ってるんですよ。「あらそう。ところで100シリングくれない?」

はい?「だって見るからにお金もってそうなんだもん。」確かにそうだけれども・・・こんな夜遅くにバックパック背負って突っ立っている極東人がいたら誰だってそう思うだろうけれども・・・

どういった義理があってあなた様にそんなお金を差し上げねばならないのでしょう?「あなたのこと好きだから。ちょうだい。」

数十秒前に会ったばかりでしょうが。あなたにくれてやるお金などございません。と断る。

「お前は私の敵か?敵なのか?」急にドスの利いた声で態度を豹変させたナオンにビビる・・・。動揺を隠そうととりあえず荷物をおろし座っていると、「あの、大丈夫?」と男の人に話しかけられた。

あ、はい、一応大丈夫です。「ほんとに?ほんとのほんとに大丈夫?」うん。知り合いを待ってるんですよ。「どんな知り合い?」カウチサーフィンというかくかくしかじかで・・・。「じゃあまだ会ったことはないんでしょ?」そうなりますね。「そのカウチサーフィンての知らないけど、覚えておいてね、ここ、ナイロビだからね。」

ギク。「ボクはケニア人で、ずっとここに住んでるから君よりは随分ナイロビの事知ってると思うけど、この町はなかなかクレイジーだからね。さっきからそこにいる女達も君がお金持ってるって思ってずっと見てるでしょ。」ハハハ・・・そうなんですよね。

「ちなみにボクは嫁さんの迎えを待ってるんだけど・・・中々来ないのね。一緒にここで待っててもいい?」もちろん!そのほうがこちらとしても助かります。

それからナイロビという町についてあれこれ教えてもらう。「もしその知り合いが来なくても、こんなところにキミを放っておくわけにはいかないからウチに泊めてあげるよ。ずっとは無理だけどね。」ありがとう!

「例えば凄く親切な人と出会って、二、三日、もしくは一週間一緒に過ごして、ずっと良くしてもらったりするかもしれない。でも、最後の最後に、キミが油断したところで全部持ってっちゃうってことだってあるんだからね。簡単に人は信用できないよここでは。」そういった件については、カンボジアで経験済みなので重々承知しております。

「かといって全ての人に警戒してノー!ノー!って言うのも、本当に良い人との出会いを逃すことになるから気をつけないとね。」うん。

三十分ほどたったころ「ジャミ?」イグナシアスが迎えにきてくれた。ずっと話し込んでいたポールという名のこの人をイグナシアスに紹介し、また近いうちコーヒーでも飲もう、と連絡先を交換し、お礼を言って別れる。ふう。

カウチサーフィンで知り合う人は得てして「大丈夫」な人ばかりなので信用しがちだが、ここはナイロビ・・・ポールの助言を忘れずにいよう。

「夕方になっても連絡ないから、てっきり今日はもう来ないのかと思ってたよ。」とイグナシアス。バスが意外に時間かかってしまい、お手数かけましたわざわざ迎えにこさせちゃって。「いいよ気にしないで。ところで、実は今ボクん家兄弟がきてて一杯なんだ。だから家の近くのホテルに案内するよ。」

シティセンターから20分ほどのサウスBという地区へ。「ボクの父親が建てたホテルなんだ。」と安宿へ。タクシー代を払わせてしまった上に、今夜の宿代まで!それはいけない、払いますと言っても「いいのいいの!ジャミを泊めてあげるって約束したのはこっちなんだから。」

宿近くのレストランでフライドポテトとチキンを買って帰り、部屋で食べながら少し話し、「もう遅いから今日はとりあえずおやすみ。また明日の朝迎えにくるから。」アサンテサナ!とってもありがとう!

ナイロビ初夜、どうにか無事にきりぬけられた・・・

驚きの再会、マタトゥーはヒップホップ

8時半に迎えに来るから、と言ってやってきたのは9時半という、見事なアフリカンタイムでおはようイグナシアス。

割と早口で、しかも声が低くアフリカン英語なアクセントのため彼の言葉が聞き取れないことがあるせいか、今日は彼の家に泊めてもらえるのか、それともこの宿にもう一泊するのかよくわからないままとりあえず荷物をまとめると、「じゃあいこっか。」と荷物ごとボクをマタトゥー(ミニバス)に乗せる。

あら?イグナシアスの家は確かここサウスBのはずなのに、どうしてマタトゥーに?

シティセンターに戻ってきた。そして昨夜ビクビクしながら立ちすくんでいた彼のオフィスに到着。「とりあえず荷物ここにおいて。インターネットでもしてるかい?」あ、うん。カレッジでTOEFL等資格試験の指導をしているらしい。

はて?私は一体・・・とりあえずインターネットに興じて、昼はビル内の食堂でケニア料理のウガリ(とうもろこしをあれしてアレした例のアフリカ料理)を頂く。西アフリカはトーゴで食べたフフというもろこし料理で衝撃的な不味さを体験して以来、極力もろこしは避け、米を食べていたのだが、このウガリはなかなかどうしてイケるではないか。牛肉のスープにちょこちょこつけながら食べる。

そしてまたインターネット。一体全体どうすればよいのか分からないのでとりあえずYoutube。

そうだ。サファリへ行くんだった。タンザニアで悲しい結果に終わったサファリの夢を今度こそかなえるべく、サファリに行くつもりであることをイグナシアスに告げ、それなりに安いツアーが、日本人のよく集まる安宿ニューケニアロッジで申し込めるらしいことを付け加える。

「じゃああとで一緒にそのロッジいってみようか。住所どこだかわかる?」えっと、リバーロードだって。

「え!?リバーロード!?それもろダウンタウンだよ!危ないよ!ボク達だって行かないよ!」えぇ!?そそんなに!?そんなにもか!?

でもやっぱり行っておきたいので、連れていってもらう。「リュックとかは全部ここに置いてったほうがいいよ!あそこらへんは人が多くてスリも頻発してるから。」ウィス。気をひきしめていざ出陣。

オフィス街からほんの少しの距離なのに、そのダウンタウンと呼ばれる通りにさしかかった瞬間、人種というか、そこを歩く人の種類ががらっと変わった。スーツや綺麗な格好をした人よりも、ボロボロのTシャツにズボン、サンダル、要するにボクみたいな格好の人が圧倒的に多い。

ポケットに入れたカメラ等をスラれないように細心の注意を払いながらついにニューケニアロッジに到着。ん?

あ。あ!昨夜バスを降りたカンパラコーチのオフィスから徒歩三十秒の距離にそのロッジはあったのでした。

なんだかあれこれ迂回しているような今回のナイロビ。中へ。

ん?

めっさ日本人いてますやないの!!

「めっさ日本人いてるね。なんだろね。」呆気にとられるボクとイグナシアス。

そしてよくみると、ぬあ!!!「ぬわあ!!!」

八ヶ月前にエジプトで知り合い、お互い西アフリカに向かったもののあちらではついに再会することがなかった通称仙人という名の男と、こんなところで驚きの再会。やっぱり世界は広くて狭い。

ともあれ、サファリツアーの詳細をきき、値段交渉の末申し込むことに。ついにです。アフリカに来て一番トゥーリスティックなことをやっちゃうのだ。明後日発!

暗くなってきたのでそそくさと、オフィスへと舞い戻り、再び荷物を持ってマタトゥーへ。ん?そういや今晩私はどうなるんだったっけ。

サウスBへ戻ります。荷物を担いでこっちへやって来た意図がよくわからないが、そこらへんについてもボソボソっと早口で説明されたのでオゥケィオゥライととりあえず飲み込んでおいた。

ナイロビのマタトゥーは二種類あって、一つは普通のミニバスタイプのものなのだが、もう一つが、ど派手に装飾されたバスで、ドライバーないし料金回収係の連中はほとんどが若者、車内のあちこちにラッパーのステッカーが貼られ、照明は怪しげなブラックライト(だもんでやたら皆の歯が光って怖い)、故障しているであろう液晶テレビを前方の壁に埋め込み高級感を演出、そして轟音でヒップホップを流しながら走るというもの。

ナイロビ市内を走るバスで襲われる観光客も多いので、移動には必ずタクシーを使うように。とガイドブックや何かで言われていたが、こりゃあまさしく、襲われるにはもってこいのバスではないか。

が、そんな恐れに反してバスの連中はフレンドリー。音楽も普段よくきく米国産のものが流れているのでなんだか楽しくなる。

いいじゃないナイロビの改造マタトゥー。

サウスBに戻ってくると、やはり宿へ。同じ部屋へ再びチェックイン。何だったのだろう今日の一連の荷物運搬作業は・・・。そして隣のレストランへ行くも、イグナシアスは家で食べるつもりらしく、ボク一人注文。食べ終わるとまたねと別れる。

ううむ。これは一体・・・家に泊めてもらい、あれこれ語らい合うのを楽しみにしていたのだけれど、少しその期待とそれているうえに、イグナシアスに面倒をかけているようで申し訳なさを感じ、残念だ。なんだか。

スラム歩き、ニャマチョマを食う

今日は日曜でイグナシアスも仕事が休みなので、ナイロビのあちこちを案内してもらうことに。

昼頃にシティセンターへ向かい、オフィス街一階のレストランで昼食をとり、散歩。イグナシアスが通っていた大学のキャンパスを歩き、あれやこれやと説明してもらう。やっぱりボソボソの早口なので半分ぐらいしか理解できていないけれどオゥケイオゥライと返す。

大学をぐるりとまわって今度は大きな公園へ。地元民達がさまざまに憩っている。何というか、実に平和ではないか。日本のそれと同じような、淀んだ池をボートに乗って一所懸命漕いではしゃぐ家族や、アイスクリームを頬張りながら語り合うカップル。

これまたガイドブックか何かには、一見平和そうにみえるが公園へ行ってはいけない。いつ襲われるか分かったもんじゃない。と書かれていた気がしたが・・・

襲われるときは襲われるんでしょう。それはナイロビに限らず日本に至って同じでしょう。要は運。ともかくもう典型的な日曜の昼下がりを絵に描いたような公園でした。

「スラム行く?」スラムと聞いてまた若干ビビったが、せっかくなので連れていってもらうことに。マタトゥーに乗ってサウスBへと戻る。近くにスラムがあるそうなのだ。

ところでスラムってなあに?

「ここらへん一体がスラムだよ。」ああ。なるほど。掘っ立て小屋のような家々がひしめき合い、小さな路地が縦横無尽に通る、いわゆる貧しい人達の生活の場だ。

「心配しなくていいよ。ここには友達いっぱいいるし、誰もジャミのこと襲ったりしないから、写真も撮っていいよ。」そそうなの?じゃあ遠慮なく。バシャバシャと撮影する。

非常に汚い。汚いけれど皆明るい。大学や公園よりも断然楽しいスラム街。ありがとうイグナシアス。さすがに一人じゃ来られてないよ。「そうか、ならよかった。」

ところでさ、ニャマ、ニャム、なんとかって食べ物知ってる?「ニャマチョマのこと?」それ!それってどこかで食べられる?友達がうまいって言ってたんだよ。「もちろん。そこの肉屋で食べられるよ。」

知り合いらしい肉屋へ入り、奥へ。ニャマチョマ一丁入ります。

要はケニア版焼肉。炭火で焼いた牛肉を一口大にカットして塩をふって食べるという至ってシンプルな料理。頂きますウマ!!これウマいわイグナシアス!「食べて食べて、全部食べていいよ。」

牛さんどうもありがとう。草食男児になりかけていたボクですが、久々肉をがっつり食べられて男気増した気がするよ。

スラム見学を終えると宿に戻り、荷物を持ってニューケニアロッジへ。明日はいよいよサファリツアー。なので今晩はロッジに泊まることにしたのである。

マタトゥー今宵はR&Bを爆音で。ようやくナイロビに慣れてきつつある。ような気がする。

夢叶いました今日からしばらく観光客ですボクはもれなく

同じ日にツアーに参加する客は四人いると聞かされていたのだが、フタをあけてみるとボクと、もう一人日本人のコージさんという方の二人だけであった。

10時過ぎにドライバーが迎えにきて出発。チャールズという名のおっちゃん。なかなか人柄の良さそうな雰囲気をかもし出している。

向かうはマサイマラ国立公園。これまた超をつけるほど典型的なスポットである。ツアー客も多いのだろう。

途中どこかで昼食休憩。ぬなんとビュッフェ。食べ・放・題。好きな言葉トップ15にランクインするのがこの食べ放題。普段は朝食代をケチってぬいたり、バス移動のため食べられなかったりでろくでもないので、ここぞとばかりに食べてみせますビュッフェ。

大盛りを計二皿分頂きました。がしかしやはり食が細くなっている感が否めない。学校のマラソン大会でへとへとになった帰りに焼肉食べ放題に行ったりしていた十代の頃の若い胃袋が懐かしい。老い、ですね。

それからさらに二時間ほど走ると、むむ?左前方に何やら。

キリンさんでございます。

ナショナルパークに入る前からもう現れてくれちゃって大盤振る舞いありがとう。

16時頃到着し、キャンプへと案内される。素敵なテント!シャワー・トイレも完備でなんとも贅沢。荷物を置いてティーブレイク。を挟んだのち早速公園内へ。ゲームドライブと言うそうだ。業界用語だ。

ゲートをくぐり中へ入った途端あー早速ガゼルにインパラシマウマにヌー!!!

ミニバンの天井から顔を出してシャッターをのべつ幕なしに押し続ける、超をつけざるを得ないほど典型的な観光客ジャミラ。

シマウマって何!?何だあれ!?なんかもう・・・かっこいいーーー!!!でもあれって、あの柄って、身を守るためなんですよね。ライオンとかって白黒にしか物が見えんから、あのシマシマ模様が草むらに隠れとっても分かりにくいらしいですよ。「シマウマだけがその事実に気づいたわけだ。やるじゃん」などとコージさんと喋る。

すると、無線であれこれ交信しあっているチャールズのもとに緊急連絡「チーター現る。」

俄然興奮する我々調査隊(二名)。先へ進むと、十台以上もの車が次々に集まっていたのですぐに居場所がわかった。

イマシターーーーー!チーターーーーーア!地上最速の足を持つ輩ー!!!かなり至近距離に、大勢の車が群がっているのにもかかわらず、さすがチーター。全く動じない。「また来たよあほの人間が。ったく、しょうがねえなあ。」とでも言わんばかりに少しその場を行ったり来たりとファンサービスをしてくれる彼。その一挙一動に黄色い声をあげる人間共。異様だ。いつぞやのヨン様だ。

しかし気持ち悪いななんか。この群がりよう。無機質な車体が一箇所に集中しているさまが、なんだかゴキブリにみえて仕方がない。ああもうこれゴキブリですよ車が黒色だったら尚更!「ほんとだね」そんなゴキブリの一味であることは棚に上げておこう。

さらに奥へと進むと、今度はジャッカル。こちらはスリランカでも拝見済みなのでささっと撮影。ぬぬ?またしてもゴキブリの群れが前方に・・・キマした・・・

象さんあなたに会いたかった・・・

家族らしく、7頭ほどで群れている。微笑ましく眺めていると、「どっこらせっと」の掛け声とともに(そう聞こえそうな気がしただけである)、

象さん交尾始めました

こんな貴重な瞬間にお目にかかれるなんて!ここぞとばかりに撮影。「オレのゾウさんを・・・」とまたがるオス象も凄まじいが、その巨体を支えるメス象の献身的な構えにも恐れ入った!

「普段ゾウは夜に交尾するんだよ。キミらラッキーだよ。」と運転手のチャールズ。そうなのか!ラッキー。

今日は小手調べというか、陽が沈むまでのほんの二時間程度のドライブで終了。キャンプに戻り、またしてもビュッフェを頂く。う、うまい・・・スープからご飯から野菜の炒め物からチャパティから紅茶まで全部うまい!!!こんな贅沢な生活・・・久々すぎて恐怖心さえ覚える。贅沢してもいいんですかボクみたいなもんが・・・

22時にはジェネレーター(自家発電機)がきられるので、辺りは真っ暗闇。満天の星空がどこを見上げても瞬くのみという驚異的な光景を目の当たりにし、次流れ星みたら寝よう。と素敵に不気味な名言を発しつつ就寝。

アフリカの大地に腰をおろす恐怖

朝食もやっぱりビュッフェでがっつりいただき、今日は丸一日サファリ漬け。昨日と同じく、ゲートをくぐるなり草食動物達に出迎えられる。

みんなおはよう。うん、おはよーう。見向きもされていないのに彼らに挨拶していると、早速ゴキブリが群れ始めた・・・一体その先に何が・・・

またしてもチーター!!!

おや?口元赤くないかい?

ギャ!!!ガゼル喰ってはるーーーーー!!!!仕留めたばかりのもよう。ガゼルのご冥福を祈りつつ猛烈に撮影。なんなら動画まで。

肉をちぎり骨を砕く音まで聞こえてくるほど至近距離で拝む。野生の厳しさを思い知る。人間なんてこんなところに放り出されたら真っ先に餌食になるしかないのだろう。

そこからしばらく進むとお次は・・・遂にきたキング。獅子丸!じゃなくてライオン!!

ハーレムです。オス一頭にメス数頭。全員ごろごろしているだけだが、やけに威厳がある。そしてそのうちの誰かが少し体勢を変える度に、後ろを振り向く度に、「ヤーこっち向いてー!動かないでキャー!!」と騒ぎ立てる愚かな人間ども。ジャミラ。

朝っぱらから幸先のよいスタートだななんて思いながらさらにぐんぐん先へ。

世界最大の鳥類、ダチョウの群れ、通称ダチョウ倶楽部発見!!! 羽が黒いのがオスだそうな!!!いやー、でかい!そして顔ちっちゃーい小顔小顔ー!!!

ぎゅる

おや?んむ?ぎゅるるる・・・・ゲ!きてもうた。チャールズさん、緊急事態発生ですわ・・・「どうした?」

うんこ出たい・・・!!!

「この近くにトイレなんてないからなー。ちょっと待てよ」そういってダチョウ倶楽部のもとを離れ見晴らしのよいブッシュを探してもらう。

「よし、ここでいいだろう。ドア開けっ放しにして、あまり遠くへ行くんじゃないぞ!」はい!

ひょこひょこと車をおり、後方のブッシュに腰をおろす。まさか国立公園のど真ん中でこういう作業を行う羽目になろうとは・・・。今朝のビュッフェ欲張りすぎた・・・。

見晴らしの良い、木などがないところでないと、どこに猛獣が隠れているかわからないそうだ。見晴らしがよくたってチーターみたいな俊足野郎に狙われたらひとたまりもないじゃないか・・・。

「日本人男性、サファリツアー中猛獣にでん部を食われ死亡」のニュースが新聞の隅のほうにひっそりと報じられるのを想像し、またそんな死に方だけはしたくないと思い、事を済ませるなりダッシュで車へ戻る。

た、助かった・・・。色んな意味で。

ゾウの群れを昨日よりもさらに至近距離で拝み、一匹狼ならぬ一頭象にもでくわし調子に乗って近づくと威嚇され本気でビビり避難、しばらく何も現れない地帯にさしかかり小一時間。

川辺に到着。ここでは皆車を降りることができるらしく、降りたついでにもれなくトイレにも行き、川を覗いてみると「プッハープシュー!」巨大に荒い鼻息とともにカバ先輩のお出まし。

カバは一見穏やかそうに見えるが、実は時速60キロで走るらしいというコージさんの本当かどうか分からない情報のおかげで、より一層たくましくみえた。

そのすぐ近くでランチ休憩。これまた豪華なランチセットを頂く。サルがそれを狙って近づいてくるので、警戒しながら。

再び車に乗り込み走る。と、キリンさん。かつてないほどの接近戦。不思議なアミメや、謎めいたコブの付いたお顔あたりにズームインしつつ撮影。

これまたしばらく何も現れない地帯が続き、こんなもんかな、お仕舞いかななどと思っていたその時、

尋常でないほどのゴキブリの群れ!!!!

何!?何!?何なんだ誰がいるんだ一体その先に!!!

キャーーーーーーーーーー!!!!ヒョーーーーーーーーーー!!!!!!

ヒョウ様です。大阪のおばちゃんじゃなくて、本物のヒョウです。二十台はあろうかという車が集うほど人気者のヒョウ様。チーターやライオンと同じく、ヒョウ様の一挙手一投足にいちいち感動する人間ども。ジャミラ。

そして同じく全く動じない彼。何かを狙っているようすだが、ゴキブリが多すぎて集中できないのか、すたすたとブッシュの奥へと消えていったヒョウ様。さようなら・・・

帰りにガゼルのハーレムを発見。が、「なあなあ、ええやろ?お前ええやんか。」と詰め寄るもことごとく「やめてよきもい。」と足蹴にされる悲しいオスの姿を目の当たりにしてしまい同情。ハーレムの中にいるからって必ずしもモテるわけじゃないんだね・・・。

サルの縄張り争いや妙な鳥を見掛けつつ、本日のドライブこれにて終了。陽が沈むまで少し時間があったので、町を歩いてみると、マサイ族だらけではありませんか。

鮮やかな色使いの衣装に身をつつんだ老若男女。市場にひしめきあう様は圧巻だったのだが、写真をとると間違いなくお金を請求されるので、眼に焼き付けておくだけにしておいた。

そして今宵のビュッフェもべらぼうに旨く、星空もべらぼうに美しい。幸福です。アフリカに来て一番心躍った一日でした。

チップという習慣に戸惑う極東人

朝6時起床。寒い。吐き気を覚える。この冬の寒さを彷彿とさせる感じも久々だが、辛い。やはり寒いのは苦手だ。おえー。

最終日の今日は早朝ドライブ。日の出を拝むべく早々にパーク内へ。6時半にはもう山の向こうに陽が登り、ぱぱっと撮影して走り始めると、早速ライオンズ。オスとメス一頭。それに少し距離をおいて別のオスが一頭。

負けたのかおまえ・・・。メス争奪戦に。かなしい背中をみせつける負け獅子。きっと君にも春は来るよ。とエールを送り、先へ進むとジャッカル。近くでみると実は可愛いジャッカル。

むむむ?何か様子がおかしい。そわそわ落ち着かないジャッカルうわー!!!

そのすぐ後ろをまたライオンが横切る。二頭いる。そして、喰っている!!!何かを喰っている!!

ジャッカル落ち着かないわけだ。おこぼれ頂戴したいわけだ。よくよく辺りを見回すと、木の上にハゲワシが三羽構えていた。お前達も血のにおいをかぎつけておこぼれ頂戴しにきたのか。

一番にボク達の車が見つけたのだが、気がつくとあっという間に十台近いゴキブリが集まっていた。彼らも血のにおいがわかるのだろうか。無線連絡のおかげです。

もうお腹いっぱい。充分あれこれみれました。と満足げな気持ちでいると、これでもかといわんばかりに突如、バッファローの群れが現れた。

その数500頭はくだらない勢い!よくみるとむしゃむしゃと草を食べながらぼけた顔をしていて、ツノの形なんて、どこぞのお坊ちゃまの真ん中分けヘアーみたいで笑えるのだけれど、その数の多さに圧倒されたじろいでしまう。

もう、今度こそお腹いっぱいですと大満足していると、まあまあそう遠慮せずに、おかわりいかがです?とチーターが二頭もやってきた。

ご馳走さまでございました。290ドルという恐ろしい大金をはたく価値のある三日間でございました。

ドライバーのチャールズも気の利くいいおっちゃんで。さあ帰りましょう。

さあどうしましょう・・・。

こういうトゥーーリスティックなツアーに必ずといっていいほどつきものなのが、「チップ」。日本で生まれ育ったボク達にはどうしてもなじめない習慣である。

常に客に対しては完璧なもてなしをするというのが普通な日本人にとってチップというのは、なんだかどうもしっくりこない気がするのだ。チップなどなくとも充分な給料をもらっているというのも日本人だけなのかもしれないが、やはりこうさらっと自然には渡せない。どこか義務感に似た気持ちが押し寄せる。

それについてコージさんと協議し、「あーもう何なんだチップって。もし少ないとか言われたらどうしよう・・・」と嘆き合ったりしている時点で変。

結局300シリングづつをそれとなく渡してみようという結論に達し、ニューケニアロッジに着いたところで、これほんのちょっとだけど二人からはいどうぞどうもありがとう楽しかったです、と不自然に早口に、まるでワイロでも握らせるかのように早急に手渡した。

「ありがとう!」

普通に喜んでもらえたようだ。ほっ。事なきを得た。

きっとこんな些細な事でいちいち考え込んでいるのは世界広しといえども日本人ぐらいのものだろう。デリケートすぎる日本人に幸あれ。

※サファリで見られた動物まとめ(順不同)
ジャッカル、バブーン、サバンナモンキー、イボイノシシ、カバ、アフリカゾウ、マサイキリン、シマウマ、ライオン、ヒョウ、チーター、ヌー、バッファロー、コークハーテビースト、ウォーターバック、アンテロープ、トムソンガゼル、インパラ、ディクディク、トピ、ハゲコウ(こいつはウガンダやタンザニアのゴミ捨て場にも普通にいます)、ハゲワシ、カンムリヅル、ダチョウ、ホロホロチョウ、テリムクドリ、ソーセージツリー(という名の木。)

恐ろしく快適な宿

サファリツアーを終えほぼアフリカでの使命を成し遂げたような気になっていた折、先日偶然再会した仙人という男からメールが届いていた。

「今一緒に旅をしているスペイン人のトラックで、北上しますがよかったらジャミラさんもどうですか。」

なんと!これは非常に有難いお誘い。ここからエチオピアとの国境の町モヤレまで北上していくには、トラックの助手席もしくは荷台に乗せて、いや載せてもらい悪路に次ぐ悪路を乗り越えなければならなかったので、是非ともそちらのトラックに!

というわけで一つ返事で彼らが泊まっている宿へと移動する。シティセンターから少し離れたところにあるジャングルジャンクションという所。

到着した途端気に入ってしまった。欧米人経営の宿で、主にキャンピングカーやトラック、バイクなどで旅をしている人向けなのだが、欧米的な一軒家に広々とした中庭があるというような具合で、閑静な住宅街にあるのでセキュリティ安心、キッチンにホットシャワー、おまけにワイヤレスインターネットまで使い放題、犬二匹付き!

という「快適な宿に必要な条件」をほぼ全てカバーした場所なのだ。早速仙人、それからスペイン人のダヴィと合流。何卒よろしくお願い申し上げますと挨拶をし、トラックをみせてもらう。

ずっどーーーん

なんですかこの巨大な戦車手前の乗り物は。ドイツ製のトラックを自分で改造した代物だそうで、キャビンの部分が見事なまでに「部屋」になっていて。五人まで眠れる広々設計!

細かい所にまで工夫がこらされていて、収納スペースもあちこちに。機会があればテレビショッピング等で量産して販売したいほどである。

これに乗って旅をするのか・・・ウキウキしてきちゃった。

一通りトラックの設備等を説明してもらった後は、ひたすらリラックス。

そして夜になると他の宿泊客の欧米人達とともに、例のニャマチョマを3キロも購入してきて皆で頂く。やけに肉々しい晩餐。

ナミビア人の女の子を連れて旅をしているイギリス人のおっちゃん(現地の女の子をつれた白人の多いこと。どこの国でも。)の様々な「体験」談に耳を傾けたり、包茎(割礼)と宗教のかかわり合いについて話したりする。

今宵学んだこと・・・・ハクナマタタは、スワヒリ語で「心配なーいさー!」だが、ハクナマティティは、「おっぱいなーいサー!」を意味するので注意が必要であるということ。

出陣。戦闘車両が町をゆく


数泊して英気を養い、戦車のメンテナンスを終え、ついに出発の日がやってきた。なんとなく頭も刈ってみた。再び3ミリのジャミラ。

いよいよだぜい!同じく北上するバイク旅行者のイギリス人マイケルも一緒に出発!ガンガンいこうz、

まずは給油。

予備のタンクと合わせ200リットル近い量であった。凄まじい・・・さあ気をとりなおしてガンガンいこうz、

そして洗車。

念には念を。先は長いからね。完了!今度こそ!オラオラー!!どでかいトラックを運転する欧州人と極東人が二人乗っているさまは、かなり奇妙なものだったらしく、道行く人が次々に振り返り、マタトゥーの運転手達もワホーイと手をふってくる。

そして一様にトラックの天井あたりを指差すのだ。

何でって、ダヴィがニジェールあたりで拾ってきた牛のがい骨が取り付けられているから。ますます奇妙。

かなりの重荷なので、バイクで行くマイケルとはスピードが随分違うため、とりあえずサガナという町でまた落ち合うことにして、我々はずっしりと進む。

二時間ほどでサガナに到着し昼食を兼ねて休憩していると、目の前で交通事故が発生するというちょっとしたハプニングが起こったが、自分達には関係ないのでのんびりとティーをいただく。

再び出発し今度はイシオロという町で合流予定。そのイシオロへ向かう途中、アフリカ第二の高さを誇るケニア山の横を通ったのだが、思っていたよりもかなりか細い山だったため、がっかりしてしまった。

がっかりされたケニア山も、がっかりされたところでどうしようもないから困っちゃうのだろうけれど。高けりゃいいってもんじゃねんだよ。と偉そうに説教をしたくなるほど先端が細くて不恰好なのです。もっと太れよケニア山

あちこちで寄り道をしながら走っているとあっという間に陽が暮れてしまった。マイケルから電話がかかってきて「もうとっくにイシオロに到着している」と。あと一時間ぐらいでつくんじゃないかな・・・なんて適当に答えて、さらに走り続け、ダヴィが「ちょっとタバコ買うから」と小さな町に立ち寄ったらば何故かそこにマイケルがいた。

「ここイシオロですけど」

え!そうなの!?タバコが切れてなかったら素通りしているところだった。ともあれ無事合流できた我々は、タバコついでに卵や野菜も買い込んで、町から少し離れた、人影の少なそうな草むらでトラックを停めた。今夜はここでキャンプだそうだ。

テーブルと椅子を用意し、運転係のダヴィは休憩、夕食をボクと仙人が担当する。担当する、というほどのものでもないが、オムレツとサラダをちゃちゃっと作り、パンとともにいただきます。

質素だがこの上なく贅沢な食事である。空には満天の星。ティーを飲みながら男同士の下世話なしゃべりを繰り広げ、四人仲良くトラックの中のベッドで就寝。ちょっとした修学旅行のような旅だ。

マサイ族トラックに乱入


目を覚まし窓の外を見やると、ギャ!村人が大量に「なにごとこれなにごと?」と集まっていた。ジャンボーマンボー!とハミガキをしながらにこやかに挨拶をすると、皆にっこりと返してくれた。

このトラックで旅をしていると、どうしても町中ではなくこういった観光客が絶対に来ないような場所で寝泊りするため、滅多に外国人を目にしない村人達が毎回こぞって集まるのだと仙人が言っていたのを、ついに体験した瞬間である。

そんな村人達に囲まれた状態で朝食をとり、「トラックにトイレあることはあるんですけど、後の処理が割りと大変なんで、なるべく外で」とのことなので遠慮することなく野原で用を足す。大きな用。

出発して間もなく、噂の悪路にさしかかった。アスファルトが途切れ、石コロだらけの凸凹道が続く。少しの凸や凹でも車体はかなり揺れ、キャビンの引き出し等は全てロックしておかないとドッペルゲンガーの如くどんがらがっしゃんと滅茶苦茶になるのだ。

昼過ぎに小さな村に立ち寄り休憩をする。そう、この地域はかの有名なマサイ族がわんさか生息しているところなので、ごく普通に、色鮮やかな衣装を着てどでかい穴を耳に空け、槍だの杖だのをもっている人々が行きかっている。

何故こんなにもお洒落になっちゃうんだろうこの人達は・・・と考え込んでしまいそうなほど素敵だ。写真を撮りたくて仕方がないのだが、一度でも彼らに向けてシャッターを押すと、すぐさまお金を請求されてしまうため撮れない。

そんな風にしてしまったのは誰でもない我々観光客なのだが、残念でならない。残念ながらお金を払ってまで撮りたくはない。そんな写真後でみたってきっと面白くないから。

でも惜しいなあ、こんな人達を見られる機会なんてもうないのに、ああ撮りたい彼らの美しい姿を。と思いつつ再びトラックに揺られていると、前方に、ヒッチハイクをする人影が。

マサイの女性!!!!!

ダヴィも仙人も奇声を上げて喜び停車、「カモーン!!」。不気味にハイテンションなスペイン人と日本人が突如目の前に現れたのでとまどいを隠せないでいる彼女とその赤ちゃんを、「はやくはやく!」と乗せて出発。

少し走ったところでそのマサイウーマンのお友達とみられる女性達が四人ほど歩いていた。何やら叫び手招きするウーマン。仲間が増えた。

ドアを開けて四人の女性も乗せようとしていると、それに気づいた近所のガキ共まで紛れ込んできて、総勢20人近い大所帯になってしまった。木下サーカスの地方営業かしら。

「写真撮ってもいい?」とダヴィが尋ねると、トラックに乗せてもらったからまあいっかと快く了承してくれた。ここぞとばかりに激写するボクと仙人。この機を逃す手はないじゃないか。

撮った写真を見せてあげると、他のアフリカ人達同様に「アキャーーーこれみてーー!!!」と喜んでくれた。

お互いにアサンテサナ(どうもありがとう)とお礼を言い合い別れる。ああ楽しい!バス等公共の乗り物での旅とはまた違った楽しみが沢山でもうロマンティックだかエキゾチックだかがとまらない。

な・の・に。

さらに今度はマサイの男共がヒッチハイクをしかけてきたではありませんか!!!ギャー!格好良すぎる。原色をふんだんに使ったアクセサリーを腕や首などあらゆるところにつけ、髪の毛は伸ばして編み込み赤い泥のようなもので固めて、鳥の羽をあしらった飾りを頭につけて杖を持つ姿ときたらもう、戦士そのものだ。

正しくはマサイではなくサングルだかなんだかという別の部族らしいのだが、この際一番通じやすいマサイにしておこう。

またしても写真撮影をOKしてもらい、フラッシュやらシャッターの嵐。ダヴィが「ミュージックねミュージック」と流し始めたスパニッシュ音楽にも陽気にノってくれたり、これまたトラックの旅の醍醐味を知る。

彼らの村に着くと、言葉は全く分からないが何やら少し待っていてくれと言われたので、トラックを停め待ってみる。みるみるみるうちに村人がどばっと集まってきた。

一見すると服装などは普通そのものだけれど、耳に大きな穴があいていたり、軟骨の部分に派手なビーズのピアスをつけているジイチャンなんかがいて面白いので彼らもがっつり撮影しておく。

しばらくするとさっきの彼らが戻ってきた。荷物をとってきたらしい。もう少し先の町まで乗せて欲しいらしい。さらにその村の出身で、隣町でコンピューターの勉強をしている英語が達者なローズマリーという名の女の子も乗せて出発する。すらっと長身で小顔の別嬪だ・・・。

ダヴィが「ここの席が一番いいよ〜!!」とすかさず自分の隣にローズマリーを座らせたため、後部座席に座るボクはマサイの男共に囲まれてしまった。ド迫力。

途中で男共をおろし、本日の目的地マルサビットという町に着く頃にはもうすっかり夜になっていた。

ローズマリーにレストランを教えてもらい、皆で夕食。巨大なプレートにスパゲティやご飯、おかずが盛られたその名もフェデレイション(federation、え連邦?)というのを頼み五人で頂きます。

連絡先を交換して、いつの間にかダヴィの彼女ということになってしまっていたローズマリーと別れを告げ、昨夜と同じようにマルサビットの町から少し離れた草むらで停車、キャンプ。

「ダヴィ、キャンプ始めるとほぼ毎回懐中電灯持って出歩いてクモ探す性癖があるんですよ。」と仙人が言っていた通り、到着するなり懐中電灯を持って「スパイダー。スパイダーいっぱい」と探し始めた。

マイケルもつられて探し始め、最近の欧州人は何を考えているのかよく分からないななんて思っていると、「スコーピオン!」とマイケルが叫んだ。スコーピオンてあなた、

サ、サソリやんさ!!!???

サンダル以外に履物を持っていないので保護のしようがないが、怖いもの見たさのためにマイケルのもとへと駆けてゆく阿呆な男、ボク。

だって野生のサソリみたことないんだもーん

慎重に足元を照らしながら歩く。「ここ!これ!!」マイケルが指差す場所をみてみると、シャキーーーーーーーー!!!!!と尻尾を立ち上げて明らかにお怒りのご様子のサソリいらっしゃいました。怖・・・・!!!

幼少期スズメバチに刺されて死に掛けたトラウマを持つボクは、毒を持った生き物に対する恐怖心が、通常の人の1.2倍ぐらい大きいのだ。うん普通に怖い程度です。

今夜は炊事をしなくていいため、皆でキャビンに入って映画鑑賞。テレビとDVDまで備え付けられているんです。動くワンルームマンション。素晴らしい。

たとい誰一人最後まで観ずに寝てしまったとしても。

牛の血を飲みたがる男達、そのくせ子犬におびえる男達

今回のキャンプ地は本当に人っこ一人いないような場所だったらしく、目が覚めて外を見ても誰も群がっていなかったので、のんびりと朝食がとれた。

国境の町モヤレまであと250キロ程度。今日もぐんぐん参ります。

マルサビットの町を離れ、マルサビット国立公園近辺を走っていると、右手50メートル先ほどに、肥後、じゃなくて上島、じゃなくて寺門、でもなくて、ダチョウがいた。

サファリでもうおなかいっぱいだっていってんのにまだサービスしてくれるんだもんケニアったら。

凄まじい悪路、それに伴うトラックの揺れのせいで、食料庫の醤油がびっちゃびちゃにこぼれるという事件が発生し、さらにその醤油のにおいに伴いやけに空腹を覚えてしまったせいで、村で停車するなりチャパティをもぐもぐ食べてしまった。さらにさらにそれに伴い何度もトイレへ足繁く通ってしまった。

もう今日これで4回目。と高らかに宣言すると「ジャミお前おかしいよ。クレイジー。」とマイケルに笑われる。それ以降、毎回これ何回目と彼に告げてからトイレに向かうようになったことはここだけの秘密。

ダチョウのみならずガゼルやインパラまで姿を現してくれて本日も非常に楽しいトラックの旅。そしてマサイ族の次はムスリムのおっちゃん二人を乗せる。砂漠気候なのか、日差しが強く水の一切ない場所が続く。そんなど真ん中で彼らをおろすと給水所だった。

マサイ族とはまた一味も二味も違った鮮やかで美しい衣装に身を包んだ女性達が、ロバとともに一所懸命水を汲んで村へと向かっている。ダヴィがふざけてロバにまたがっていると、ロバ用のムチを持った女性が「コラ」と威嚇。そりゃ怒るでしょう。皆必死に働いている最中ですし。

実年齢は一番上(36)なのに、精神年齢が四人のうちで一番若いダヴィ。昨日からずっと「ここらへんの人は牛の血を飲むらしいんだよ。オレも飲みたい!仙人は何ミリリットル飲みたい?」としきりに言い続け、村に停まる度に「ここで牛の血飲めるか!?その牛今から殺すか!?」と尋ねている。脳の六割は好奇心がかたまってできているんじゃなかろうか。

モヤレまでもう一息のところにさしかかり、ポリスチェックで停車すると、「ここから先は、時々山賊がでて危ないから、警官を一人連れていくのがいいと思うよ。」とアドバイスされる。結構バスやトラックが襲撃されているとは聞いていたが、本当だったのか・・・。

が、警官を連れていって果たしていくら請求されるのか見当もつかないので、多分大丈夫だと思われます、と丁重にお断りして自分達だけで突き進む。

若干臆しているボクと仙人を横目に、全く気にも留めていないようすのダヴィ。さすがスペインからこのトラックで南下して、コンゴやチャドといった危険地帯をも乗り越えてきただけのことはある。

結局現れたのは山賊でも何でもなく、ラクダとガゼルという可愛いアニマルだけだった。ご苦労取り越し苦労。

夜になってようやくモヤレに到着。国境はもう閉まっているため、夕食をすませると今夜の寝床探しへ。割と大きな町なので、今までのように人のいない草むらがみつからない。

少し引き返した、割と人の少ないスペースを発見し、キャンプ。

テーブルと椅子をだしお茶を飲む。今日はマイケルの26歳の誕生日にして、旅を始めて丁度一周年記念日だそうなので、ささやかに祝う。サプライズと称して、さっき商店で買ったパンにタバコを突き刺してバースデーケーキを気取り、ハッピバースデーツーユー、を歌う。ろくに風呂に入ってないもさもさの男四人で。

はいロウソク消して!ではなくはい吸って!とタバコを吸わせたりしていると、どこからともなくオッチャンが犬をひきつれてやってきた。「今晩はー。」

人の少ないスペースというよりは、建設中の建物の敷地内だったのです実を言うと。そしてこのオッチャンはその施工主だか何だかだそうで、謎の巨大なトラックが停まっているので用心して見にきたらしい。

そしてそのオッチャンの連れた犬が、物凄く攻撃的なのだ。おいでおいでと優しく手をさしのべると「ガルルルルルル・・・」と低く唸り声をあげ軽く飛び掛ってくる始末。きょ、狂犬病!?

いやただきちんと躾けられた飼い主に忠実なだけなのだが。少しでもオッチャンのほうを向くと「お前噛んだるで」とにらみつけてくるものだから、身動きがとれない。

大きさは中型犬よりふたまわりも小さい程度なのに。畜生落ち着いてお茶なんか飲んでいられやしない。

隙をみはからってキャビンへ避難し、大して眠たくもないのにふぁ〜あなどとあくびをして狸寝入りをかます臆病な男がここに・・・!

ケニア最後の夜に何が悲しくて犬におびえなきゃならないんですか。どうせなら山賊におびえていたほうがまだかっこいいじゃないか。

そういうわけでさようならケニア

翌朝はやっぱり窓の外に村人が。そしてその中に昨夜のオッチャンと犬が・・・。朝のコーヒーものんびり飲めない畜生め。

ダヴィと何やらごにょごにょと話をし、場所借りた代としてほんの少しのお金をオッチャンに支払うと、速やかに退散していった。もちろん犬も。ああよかった。というかお金待ちだったのかオッチャン・・・。

さていよいよ出国。国境まではたったの1キロだったので、のんびりと昼前に出発、ケニア最後に皆でマンゴージュースとアボカドジュースを飲み、両替をすませイミグレーションへ。

ポンっ

おしまい。係官のオッチャンも愛想がよく、清清しくケニアを終えられました。

そして、かねてから人が鬱陶しいと評判のエチオピアへ・・・!早速あいつら・・・


エチオピア日記

ケニア(2010年2月5日〜2月18日)